前回は、業界・業種研究、職種研究の進め方をお話しさせて頂きました。
興味ある業界や業種が見つかったら、今度はその中でお気に入りの企業を発見していく作業に移っていきます。
ということで、以降の記事では、企業研究や企業分析のやり方を、順を追って丁寧に説明させて頂きます!
まず今回は、多種多様な日本企業の全体像を総合的に理解する方法について解説させて頂きます!!
男子も色々、会社も色々問題
今日は、差し入れ持ってきました💛💛
それより私、業界・業種研究が進んで、業界のいい部分だけでなく、悪い部分も見えてきたんですよね!!
外見的魅力、性格の好ましさ、身長、経済的条件、オシャレ度という5つの軸を導入して、仙人系を分類してみたって訳ね!!
背の高さと経済的条件はこだわりません!!!
けど、いくつかのモノサシ(基準)を使って整理・分類をしてみるあなたの方法、就活の企業研究で使えるかもよ!!!
そろそろやろうと思ってたんですよね、企業研究!!
企業を分類してみよう!
既出記事で紹介しましたように、日本には400万社もの企業があるとされています。
この中から、あなたにとって「理想の企業」を探し出していくことが、企業研究の主たる目的になります。
理想の企業にたどり着くために、「まずやるべきこと」は何だと思いますか?
ずばりそれは、国内にある多種多様な企業を概観し(大まかに見渡し)、その全体像をとらえることになってきます!
企業の全体像をとらえるということは、頭の中に企業の『地図』を描く作業とイコールではないかと私は思っています。
初めての土地に行くときに、頭の中に地図を描くことなく、あてもなく歩き回ってみたら(思いつくままに個別の企業を調べたら)、おそらくみなさんは、迷子になってしまいますよね・・・。
一方、頭の中に地図がしっかり描ければ、道に迷うことなく『最終目的地』(理想の企業)に短時間でたどり着くことができるのではないでしょうか?
つまり、理想の企業にたどりつくという夢をかなえるためには、その第一歩として、膨大な企業を何らかのモノサシ(基準や軸)で整理・分類してみるという作業が必要になってくるのです。
お気づきの方がいらっしゃるかと思いますが、実はこの作業、業界研究 第2回でも行っています。
そうです!
「業界」「業種」による分類です!!
「業界」や「業種」は、あまたある企業をスッキリと整理・分類してくれるモノサシの一つですが、これらに加え、どのようなモノサシが企業研究で有用となってくるのでしょうか?
以下、企業の全体像をとらえる上で重要となる4つのモノサシを解説していきますね。
①上場企業か、未上場企業か?
それってどういうことですか?
株式の売買が行われる場所になるわ!!
東証や他の証券取引所で取引されている株式を「上場株式」って言ってるんだけど、その上場株式を発行している企業のことを「上場企業」って呼んでいるの!!!
企業が「上場する」ってのが経済ニュースになるけど、それって、新たに市場で株の売買を始めるってことですよね!!
「株式を公開する」って言ったりもするわ!!
そうですよね、そう思われますよね。
詳しく解説させて下さい。
まず覚えておいてほしいのは、
どんな企業でも上場企業になれる訳ではない
ということです。
上場するためには、安定的に利益を生み出せているか、反社会的勢力と付き合っていないかなどの厳しい基準(上場基準)があり、それらをクリアした企業のみが上場できるという仕組みになっています。
一方、全ての企業が「上場」を目指して経済活動を行っているかというと、決してそういう訳ではないという点もおさえておいて欲しいと思います。
上場すると、次のようなデメリットが生じることもあるとされます。
- 株主の意見に左右されて、自由な経営ができなくなることがある
- 誰でもその企業の株を買えるようになり、会社を買収されてしまう可能性が生じてしまう
- 財務状況の報告を株主にして、利益を還元する必要が出てくる
上記の理由から、あえて「上場しない」という道を選ぶ有名企業、有力企業も存在するのです。
Table 1 非上場企業一覧(2020年4月現在)
ここまでよろしかったでしょうか?
ちなみに国内の証券取引所は、以下のように分類されています。
Table 2 証券取引所一覧
上場市場 安定性・高 | 東京1部・2部、名古屋1部・2部、札幌、福岡 |
新興企業向け市場 成長性・高 | 東京マザーズ、名古屋セントレックス、札幌アンビシャス、福岡Q-Board、ジャスダック(スタンダード、グロース) |
自分が気になる会社が上場しているかどうか、どの市場に上場しているかは、『会社四季報』(東洋経済新報社)で確認することができます。
インターネットの場合は、『四季報オンライン』<サンプル画面>、『Yahooファイナンス』<サンプル画面>で検索ボックスに「企業名」を入力し、検索をかけてみて下さい(検索結果にヒットしてこない場合、当該企業は非上場ということになります)。
有名=上場、有名じゃない=非上場って訳でもないんですね・・・
ところで、証券取引所で売買される『株式』ってどういうものか知ってる?
じゃあさぁ、あなたが会社を始めたとするじゃない、
その時、何が必要になるかな?
まずはお金が必要になるわよね!!
けれども、自分が持っているお金だけで会社に必要な資金をまかないきれない時は、あなただったらどうすると思う??
だけど銀行から借りると、利子も返さないといけないでしょ?
そこで登場してくる人物が株主さんなの!!!
株主さんに会社のお金を出してもらうってことですか!!!
株主さんにお金を出してもらい元手としたとき、出してもらった額に応じて会社の権利を分け与えるの!
その証書が『株式』ってことね!!
よかったです!
では、もう少しカッチリ説明しますね!!
事業を起こしたり、事業を拡大するためには、どうしても「資金」が必要になります。
けれど借金をすると、元本(借りたお金)に加えて利子(+αのお金)も返済しないといけなくなりますよね。
一方で、上場し株式を発行することで、資金を調達する方法を選択する企業も存在します。
銀行からお金を借りる場合と異なり、株式として得たお金は返済の必要がありません。
しかしその代わりに、企業は「利益」を上げて株主に配当金を払うと同時に、企業を「成長」させ、株の価値を上げることが求められるのです(下図参照)。
つまり『株式』は、会社がお金を集める手段であり、「上場」とは事業拡大のための資金を、株式市場を通じて幅広い人々から調達できるようにすることと言いかえることができるのです。
ってことは、新しい事業を立ち上げたり、事業を広げたりする時は、上場企業の方が有利ってことになりますよね!!
ところで、あなたって、お洋服はearth music & ecologyだけど、コスメはどこのブランド使ってるの?
私は、JILL STUARTですね!!!
もちろん、見栄えもそうだけど、やっぱり肌につけるものだから、信頼できるブランドのしか買いたくないんですよね・・・
話が急に見えなくなったんでけど??
はい、では詳しく説明しますね。
株の市場である証券取引所には、株を売りたい株主だけでなく、株を買いたい投資家も市場につめかけます。
もしあなたが投資家だったら、と置きかえて考えてほしいのですが、自分の貴重なお金をはたいて株を買うのであれば、できるだけ「信用できる企業」から株を買いたいと思うはずです(でないと、お金をドブに捨てることになりかねないですよね)。
証券取引所も投資家のそうしたニーズに応えるべく、企業の上場を決めるにあたっては、厳正な審査を行い、それをクリアできた企業のみが株式を売買できる仕組みになっているのです。
厳しい審査に合格できない企業よりも、合格できる企業の方が信用できる
これは経済のことをあまり詳しく知らない読者の方でも、直観的に理解できるのではないでしょうか?
つまり、企業が上場しているか否かは、厳しい上場基準をクリアし、社会的な信用を獲得できているか否かを判断する一つの指標となりえるのです。
②大企業か、中小企業か?
そうなんです!
まず、中小企業については、中小企業基準法により下記のように分類されています。
Table 3 中小企業とは?
業種 | 下記のいずれかを満たす | |
資本金 | 従業員数 | |
製造業、建設業、運輸業、その他の業種 | 3億円以下 | 300人以下 |
卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
サービス業 | 5000万円以下 | 100人以下 |
小売業 | 5000万円以下 | 50人以下 |
一方、大企業を定義する法律は存在しません!
それゆえ、上記の中小企業に該当しない企業を「大企業」と見なしている形になっているのです。
Table 4 大企業とは?
業種 | 下記の両方を満たす | |
資本金 | 従業員数 | |
製造業、建設業、運輸業、その他の業種 | 3億円超 | 300人超 |
卸売業 | 1億円超 | 100人超 |
サービス業 | 5000万円超 | 100人超 |
小売業 | 5000万円超 | 50人超 |
資本金や従業員数で決まってくるってことですよね?
おっしゃる通りです。
かなり幅がありますよね。
なので、超大企業、大企業、中堅企業、中小企業といった形に、4分類するやり方もビジネスの場面ではよく用いられています。
これについても、法律による明確な線引きがある訳ではなく、人により定義の仕方はまちまちなのですが、よく用いられる区分法(東洋経済新報社, 2019)を紹介しますね。
ここ、就活をされるみなさんが気にされることだと思うので、しっかり説明しますね。
まず、大企業の中でもトップクラスの企業(大企業の中の大企業)を「大手企業」と呼んでいます。
一方、「有名企業」(有力企業)は知名度と考えてみれば分かりやすいと思います。
業界内で幅広く認知され、その実力を認められている企業のことを「有名企業」と呼ぶことが多いように感じています。
とここまでで、上場企業、未上場企業、大企業、中小企業、有名企業というワードが出てきましたので、これらの関係性を整理してみたいと思います。
まず「上場企業は全て大企業か」、「上場企業は全て有名企業か」と言うと、決してそうではありません。
上場企業は、証券取引所に上場しているかどうかで決まってきます。
上場企業の中にも従業員数が少ない中小企業も存在します。
また先述のように、上場していない企業の中にも、大企業や有名企業も存在します。
例えば、サントリーは、証券取引所に上場していない「未上場企業」になります。
しかし、グループ全体で4万人以上を抱え、売上高も2.5兆円を超えていますので、企業規模から定義すると「大企業」と言うことができると思います。
また同社は、業界内の認知度や社会的な認知度も極めて高いため、この観点から「有名企業」(有力企業)と呼ぶことができると思います。
上場・未上場、大企業・中小企業、有名・非有名企業はそれぞれ別の観点から定義を行っています。
混同しないように、しっかりその違いを理解して下さいね♪
大企業/中小企業のメリット、デメリットとは?
Table 5 大企業/中小企業のメリット、デメリット
メリット | デメリット | |
大企業 | ①給与水準が高い ②倒産リスクが低い ③大きなプロジェクトが経験できる ④転職時に評価されやすい | ①若いうちは仕事を任せてもらえない ②組織への貢献を実感しにくい ③出世に時間がかかる |
中小企業 | ①若いうちから仕事を任せてもらえる ②組織への貢献を実感できる ③比較的早く出世できる ④組織に一体感がある | ①給与水準が低い ②倒産リスクが高い場合も ③大きなプロジェクトを経験できないことも ④転職時に評価が得にくい |
確かに同じ業界内で、企業規模の違いで20~40%ぐらいの年収差が生じてくるわ、けれども・・・
それから、大企業は、若いうちから仕事を任せてもらえない、中小企業は、任せてもらえるってのも、ちょっと違うかなぁ・・・
プロジェクト業務が多かったり、市場規模が拡大している業界(例;IT系)であれば、大企業であったとしても若いうちからそれなりに裁量権があるんじゃないかなぁ・・・
一方、定型業務が多いような業界(例;インフラ系)であれば、企業規模に関わらず、裁量権は少なくなるかもしれないわね・・・
中小企業でも世界的なシェアを持っている会社だと、大きな仕事やプロジェクトを経験できるんじゃないかなぁ・・・
あと、ここに書かれていないこと、言っていいかな?
それはずばり、
大企業/中小企業でストレスの程度が異なる!
ということになってきます。
Wrike株式会社が2018年に実施した社会調査では、
企業の規模が大きくなればなるほど、従業員のストレスの度合いは相対的に高くなる
事実が発見されています(下図参照)。
誤解のないように言うと、大企業が全てストレスの程度が高くなるわけではありませんし、中小企業であったとしてもストレスの程度が極めて高い職場も存在すると思います。
しかし、平均的に見てみたところ、大企業では中小企業に比べ多岐に渡る人間関係の中で業務を行うことが求められるため、結果として「対人ストレス」の程度が高くなっているものと解釈することができるのです。
ここまで見てきたように、大企業で働くことは、メリットがある一方、デメリットもそれなりにあるということができるでしょう。
また、就活生の方は、
大企業の方が中小企業より「格上」である、
だから何としても大企業に入社したい!!!
と思われる方が多いように感じています。
お気持ち、すっごくよく分かります。
ただ、日本の中で大企業に分類される企業って、全体の何パーセントだと思いますか?
実は、0.3%(1万1千社)しかないんです!
全体の0.3%の企業だけに目を向けて、残りの99.7%の企業を見ようとしないことは、あまりにももったいないですよね。
99.7%の企業の中には、上場企業も有名企業もありますし、業界内で高いシェアを誇る企業も、もちろん存在します。
他の企業が到底マネできない独自の技術や特許を持っている企業もありますし、国際競争力が高い企業も多数存在するのです。
大企業を目指すこと自体、悪いことではありませんが、大企業は日本企業の言わば「氷山の一角」に過ぎません。
それゆえ、中小企業にも積極的に目を向け、大企業に勝るとも劣らない実力企業を発見していってほしいと思います。
③親会社か、子会社か
一般的に親会社の方が知名度が高いですよね!!
じゃあさぁ、次の会社って、『親会社』だと思う?、『子会社』だと思う??
簡単です、全部、『親会社』です!!
Table 6 親会社・子会社の対応関係
親会社 | 子会社 |
NTT | NTTドコモ |
ソフトバンクグループ | ヤフー |
三菱商事 | KFC |
伊藤忠商事 | ファミリーマート |
セブン&アイ・ホールディングス | セブンイレブン・ジャパン |
ダスキン | ミスター・ドーナツ |
先生、じゃあ親会社と子会社って、どうやって決まってくるんですか???
その質問に答えるため、もう一度だけ、「株主が会社に対して出資する」ことを表したこちらの図をご覧頂きたいと思います。
株主は、会社の株を買うかわりに、配当として支払われるお金などのほか、会社の経営に参加する権利(議決権)を得ることができます。
一般的により多く出資している株主ほど、経営に対する決定権や影響力が強くなると考えて下さい。
株主になれるのは、個人だけではありません。
『企業』もまた、株主になることができるのです!
つまり、ある企業が別の企業の株主となり、経営的に一定の決定権を有している場合、両者に親子関係がある(株主の方が親会社、もう片方が子会社)と呼んでいるのです。
資本的な主従関係を表したのが、親会社・子会社って考え方なんですね!!
じゃあ、グループ会社って何ですか?
会社Aが、a1・a2・a3という複数の子会社や関連会社を持っていたとするじゃやない?
この会社のカタマリ(a1~a3)を総称してグループ会社って言ってるわけ!!
Table 7 親・子・孫会社の対応関係
親会社 | 子会社 | 孫会社 |
NTT(日本電信電話株式会社) | NTTドコモ | タワーレコード |
つながってるんですね!!
つながってるの!!
けど・・・?
これも就活生におさえておいて頂きたいワードの一つですので、以下、説明させて頂きますね。
先程、会社の株を持っていればいるほど、経営に対する決定権が強まるってことをお話ししましたよね。
つまり「持ち株の比率」により、相手方企業への影響力が強まることになってきます。
この持ち株比率に着目してみると、子会社と関連会社の違いがしっくりくると思います。
親会社に株の50%以上を所有されている場合や、50%を超えなくても実質的な影響下に置かれている場合は、その会社は「子会社」ということになってきます。
一方、親会社に会社の株の20%から50%を所有されている場合や、親会社が財務・営業・事業の方針決定に重要な影響を与えることができる場合、その会社は「関連会社」ということになってくるのです。
つまり、グループ会社のなかでの子会社と関連会社の差は、親会社の持つ影響力の強さと言い換えることができるでしょう。
読者のみなさんは、必要最低限の知識として、
所有されている株が50%を越える場合は「子会社」、20~50%なら関連会社
と覚えておいて頂けるとよいかと思います。
親会社/子会社のメリット、デメリットとは?
親会社、子会社、孫会社、関連会社の意味が分かってきました!!
ただ、これも大企業と中小企業の話と一緒で、一概には言えないのよね・・・
そうなんです。
ケース・バイ・ケース、企業ごとに違います。
ただ、そうした違いを生み出しているものが、「どのようにして」親会社・子会社の関係が生まれたのか」、という点にあるとされています。
いったい、どういうことなのでしょうか?
子会社は、その成り立ちから、
・一つの会社からある部署が独立(分社化)して生まれたもの
・ある会社が別の会社を買収して生まれたもの
に大別されています。
前者の場合、元は一つの会社なわけですから、社風や労働環境、待遇面において、親会社と子会社の間でほとんど差がないケースも多く存在します。
一方で後者の場合は、以下の表のような違いが生まれるケースがあるとされています。
Table 8 親会社/子会社のメリット、デメリット
メリット | デメリット | |
親会社 | ①給与の待遇がよい ②人員削減のリスクが低い ③親会社から子会社へ移りやすい | ①出世競争が厳しい ②仕事のプレッシャーが大きい |
子会社 | ①親会社が安定していれば子会社も安定している ②親会社の看板を利用して働ける ③出世競争が厳しくない | ①給与の待遇が悪い ②親会社の方針に左右される ③優秀でない人材が天下りしてきて上司になることがある |
客観的なデータは存在しないため、個々の労働者の意見を総合したものという前置きが付くのですが、企業に買収される形で生まれた子会社では、給与や労働環境が親会社に比べ悪くなるという印象を持たれる社会人が多いように思われます。
これは、大手企業の名前を冠した子会社でも例外ではないとされています。
自分の志望企業が子会社や関連会社であることが分かった時には
- どのような経緯で子会社が生まれているのか?
- 親会社はどこであるのか?
- 親会社の持ち株比率はどの程度であるのか?
- 親会社のどの部門なりどの業務を請け負っているのか?
- 親会社と子会社/関連会社で労働条件や労働環境に違いはないのか
といった点をリサーチし、それらを慎重に精査してみる必要があろうかと思います。
④純粋持株会社か、事業子会社か
以下の企業は、何に分類されると思う?
これらの企業は、大企業であり、かつ超有名企業ですよね!
けれども、別の言い方をすることもあるの?
何だかわかる??
答えはズバリ、持ち株会社になります。
持株会社(例;X社)とは、特定の企業グループの傘下にある会社(例;Y社)を支配するためにその会社の株式を保有する会社のことを指しています。
「支配」という言葉を聞くと嫌な印象を持たれる読者の方もいらっしゃるかもしれませんが、X社とY社の間にビジネス上の主従関係があり、X社がY社の経営に対して決定権を持っている時に支配という専門用語が用いられます。
ではなぜ持ち株会社が存在するのでしょうか?
一般的に会社は成長し、その規模を拡大するごとに多くの事業を抱えていくことになります。
事業が一定規模以上になるとその部門を切り離し(分社化し)、「子会社」として機能させていくことで企業グループを形成してきます。
しかし、子会社が増え、それらの事業規模が拡大すればするほど、グループ全体の連携を取ることは難しくなっていきます。
そういった事態になった際に持株会社が設立されます。
持株会社はグループ傘下の会社の「株式」を保有し、経営の管理や戦略の立案などを担当することでグループ全体を監査し、指導する役割を担います。
つまり持株会社はグループ全体を統括する役目を果たしていると言えるのです(高谷, 2020)。
グループ企業の監督役なんだけど、監督するにあたり力が必要になってくるから、その企業の株を持っている(持ち株)ってことですよね!
実はね、持株会社って、純粋持株会社と事業持株会社に分かれるのよね!
説明、短めでお願いします!!(笑)
*この他、数は少ないですが、持株会社の傘下に入りながらも他の事業会社をまとめる「中間持株会社」も存在します。
ちょっと難しかった??
二つは同じモノなんですか、それとも別モノなんですか??
実態は同じモノなんだけど、定義の仕方が違うって言ったら分かりがいいかなぁ?
親会社って言うのは、会社法って法律による定義の仕方なのね、一方、持株会社は独占禁止法って法律による定義の仕方のなの!!
私は私だけど、親からみたら「娘」、先生から見たら「学生」って呼び名が変わるって感じですかね?
その理解で正しいと思うわ!!
昔から「事業持株会社」って言うのはあったわけね、
ただ1997年に独占禁止法が解禁になったことで現れたのが『純粋持株会社』ってわけ!!!
そして、ニューカマー(新しい親会社の形態)が持株会社ってことですね!!
もう一度整理すると、Aの純粋持株会社は、子会社を支配・統括するための会社、Bの事業持株会社は、子会社の統括を行いながら、自社でも事業を営んでいる会社ってことだったわよね!!
それ、正しいから!!
ところで、監督だけをやる純粋持株会社って、具体的にどういう会社のことを指すんですか?
私たち大学生には、全然なじみがないんで・・・
あとね、今日、お昼ごはんどうした?
学食がむっちゃ混んでたんで、セブンに行きました!
セブンイレブンジャパンを監督してるのって、セブン&アイホールディングなんだけど、これぞまさに、純粋持株会社よ!!!
何と身近に!!!
そうなんです。
セブン&アイホールディングは、セブンイレブン・ジャパンやイトーヨーカ堂、ぴあなどが入っている企業グループを支配する「持株会社」になります。
そしてセブン&ホールディングは「純粋持株会社」にあたるので、事業を全く行っておらず、店舗すら持っていないのです。
その代わり、子会社や関連会社の株式を保有して、グループ全体の戦略を考えながら指揮を出し、子会社を動かす「監督業務」に専念しているということになるのです。
一方で、みなさんがお世話になっているセブンイレブン・ジャパンは、実際に店舗を持ち、消費者に飲食品や日用品を提供していますよね。
つまりセブンイレブン・ジャパンは、持株会社であるセブン&アイホールディングの監督を受けながら、実際の事業を行う役割を担っているのです。
なので、セブンイレブンのような子会社のことを持株会社と対比して、「事業子会社」と呼ぶこともあります(←ここ、重要ポイントなので、しっかり覚えて下さいね!)
純粋持株会社のメリット、デメリットとは?
純粋持株会社が日本に増えてきてるってことですか?
一つの企業への権力の集中を防ぐため独占禁止法により純粋持株会社の設立が禁じられていたんだけど、さっき言ったように、独禁法が1997年に改正されたの!!
それ以降、増え続けてるのよね・・・、
国際競争力をつけるためには、日本にも純粋持株会社って形態が必要ってことの表れなんじゃないかな・・・
じゃあ、改めてお聞きします!
ぶっちゃけ純粋持株会社のメリットって何なんですか??
Table 9 純粋持株会社制のメリット、デメリット
メリット | デメリット |
①効率的なグループ運営ができる ②それぞれの事業子会社にあった労働条件を設定できる ③買収や合併といったM&Aを実行しやすくなる | ①事業子会社間の連携が取りづらくなる ②持株会社を維持するための経費(コスト)がかかってしまう ③子会社内での意思決定のスピードが落ちてしまう |
デメリットの①が気になったんですけど?
チームが大きくなっていくと、個々の選手同士が連携したり連帯するのが、難しくなっていくんですね・・・
上述のようなデメリットがあるのは事実ですが、今、わが国では、メカバンクや損保大手のグループトップはたいていが純粋持株会社で、金融以外にも純粋持株会社体制に移行する会社が急増しています。
今や、上場企業の7~8社に1社が純粋持株会社であるとする報告もされています(武田, 2017)。
持株会社制にはデメリットはあるものの、メリットがそれを上回ると各社が判断していることを見てとることができます。
読者のみなさんが気になる採用活動については、持株会社がグループを一括して採用を行っている企業もあれば、子会社ごとに採用を行っている企業もあり、統一がなされていないというのが現状です。
エントリーの際は、上記の点を十分に留意されてほしいと思います。
色々難しいお話をしてしまいましたが、
- 純粋持株会社と事業子会社は同じ企業グループを形成していること
- けれども、純粋持株会社と事業子会社は「別会社」であること
- 純粋持株会社は事業もしていなければ、店舗も持っていないこと
この3点を最低限おさせておいて頂きたいと思います。
色んなモノサシで会社を分類しよう!
例えば大企業の中に上場企業もあれば、非上場企業もあるし・・・、
そうだ!大企業で純粋持株会社ってとこもあるし、事業子会社だってとこもある訳だし・・・
会社って様々な『顔』を持っているから、あるモノサシで測ると「大企業」になったり、別のモノサシで測ったら「上場企業」や「純粋持株会社」になったりするってカラクリね!!
大企業ないしは大手企業、上場企業、有名企業は、それぞれ独立した別個の概念なのですが、それぞれの概念は相互に重なり合っています。
それゆえ、個別のAという企業が、ある見方をすると「大企業」「大手企業」に、別の見方をすると「有名企業」や「上場企業」に化ける(変化する)ということになるのです。
例えば、女性にやさしい企業か、そうでない企業かとか・・・
色んなモノサシを使って企業の特徴を見ていくことで、企業の「良い面」や「わるい面」を発見できるんじゃないかなぁ
またそっちに持ってくの???
もしかしたら、他のモノサシを使えばメンズの新たな魅力を発見できるかもしれないってことですよね💛💛
人の魅力を発見するやり方と会社の魅力を発見するやり方って、共通しているのかもしれないわね・・・
いかがだったでしょうか?
企業を分類する際は、第2回で紹介した「業界」「業種」がよく用いられますが、それは企業を測るモノサシの一つに過ぎません。
自分だけのモノサシを使って企業を見ていくことで、企業の新たな魅力を発見することができるのではないでしょうか?
新たな魅力の発見は、適職や理想の会社の発見へとつながっていきます。
ぜひ、自分なりの基準を使って、様々な会社を整理・分類していってみて下さい!
最後に今日の課題を提示したいと思います。
業界研究 第2回において、あなたが知っている会社を20社列挙して頂き、その業界や業種を調べて頂く課題に取り組んだと思います。
今回はそれら20社をいくつかのモノサシで分類する課題に取り組んでほしいと思います。
(2)ピックアップした20社について、「業界」「業種」(これは以前のワークシートを書き写してみて下さい)、「大企業/中小企業」「上場/非上場」「老舗/ベンチャー」「国内系/外資系」のいずれに分類されるかを記入して下さい。
(3)最後に、一番右側の「その他」の欄に、あなた独自のモノサシで分類したカテゴリー名を記入して下さい。
課題の記入例については、こちらをご覧下さい。
ワークシートの表の「その他」の欄ですが、上記のサンプルですと、その他①が「純粋持株会社か/事業子会社か」、その他②が「国内系か外資系か」、その他③が「老舗企業か(創業以来30年以上、事業を行っているか)/ベンチャー企業か(設立5年以内か)」という分類を行っています。
全ての記入が終わったら、20社がどのように分類されているか概観し、考察してみてほしいと思います。
分類した結果を、下のような簡単な図にまとめてみてもよいと思います。
分かる範囲、できる範囲でいいですので、ぜひ課題にチャレンジしてみて下さい!
まとめ
次回は、企業をみる視点と題して、どのようなポイントにそって企業を分析・評価していけばよいのかといった点を詳しく解説させて頂きます。
最後までお読み頂き、誠に有難うございました。
>> 06.企業を『4つの視点』で評価しよう!
<< 04.『業界・業種・職種研究』をやってみよう!
- <引用・参考文献>
高谷俊祐 (2020) 持株会社のメリットとデメリットとは?設立方法や増加の背景に迫る! M&A総合研究所
竹田哲郎 (2017) なぜ持株会社が増えているのか?―現場で遭遇する本当の目的(大和総研グループ レポート・コラム)https://www.dir.co.jp/report/column/20170314_011812.html
東洋経済新報社 (2019) 就職四季報2021年度版(企業研究・インターンシップ版)
吉田信之 (2017) 持株会社とは何か(大和総研グループ レポート・コラム)https://www.dir.co.jp/report/column/20171003_012339.html