前回は、「企業を見る視点」と題して、企業選びで重視して頂きたい4つのポイントをお話しさせて頂きました。
企業選びの優先順位を考える課題にも取り組んで頂きましたが、いかがでしたでしょうか?
本課題は、今後、志望企業をピックアップしていく際の一つの指針になってきます。
アドバイスをこちらにまめさせて頂きましたので、ご覧頂けますと幸いです。
今回から、いよいよ個別の企業の研究と分析の具体的方法を解説させて頂きます。
長続きする恋愛とは?
今日も何か質問があるのよね?
今さらながらの質問なんですけど、私、どういう人とお付き合いしたら、長続きすると思いますか?
どうしてそういうこと思ったの?
あたし的にこれは大問題なんです!!
はい、説明しますね♪
社会的交換理論によると、「恋愛関係が長続きするかどうか」は、
報酬-コスト
で決まってくると仮定しています。
『報酬』は、その恋人と付き合うことで得られるもの、『コスト』は、その恋人と付き合うことで失うものを指しています。
例えば、恋人と付き合うことで、「うれしい」「楽しい」といったポジティブな感情を味わえるのであれば、そうした感情は、恋愛関係で得られる『報酬』と言うことができます。
一方、前回、ソクバッキー(束縛をしてくる恋人)の話をしましたが、自分の意に反する束縛に耐えることがストレスであるならば、そうした心理的負担感は、恋愛関係で失う『コスト』と言うことができるでしょう。
その上で、社会的交換理論では、
その恋愛関係で生じるメリットの方が大きいため、二人の関係は長続きしやすい!
その恋愛関係で生じるデメリットの方が大きいため、二人の関係は消滅しやすい!
赤字が累積して、マジムリってなった時に恋愛はフェードアウトするってことですね!!
言わば、恋の債務超過ってとこかしら?
意外にムズカシそ~ですね・・・
けど、これって、会社の利益に似てませんか?
恋愛関係の継続も会社の存続も、同じ公式で表現できるってのが、今回のお話のキモなの!!
私、やっぱり同じ会社に長く勤めたいんです!!
できれば、結婚や出産しても働いていきたいなって思ってるんですよね♪
先生、ど~したいいですか?
はい、喜んで伝授させて頂きます!!!
前回、企業をみる視点として、A『企業力』、B『働きやすさ』、C『企業文化』、D『成長環境』を説明しましたよね。
基本的には、A~Dの要素を研究し、分析すれば、個々の企業評価が完成します!
特にA『企業力』の分析(会社の経営状態の判断)は、企業研究、企業分析の中核となってきます。
まずこの点を説明していきますね!!
*なお、今回は、東洋経済新報社(2019)『就職四季報』を始めとした企業研究の文献に依拠して記事を構成させて頂きました。
記事末尾の<引用・参考文献>の項に全ての出典を明記しておりますので、ご確認頂けますと幸いです。
*本記事で掲載されている企業情報、経済指標等は、執筆時に入手できた直近のデータに基づいております。
最新の情報につきましては、読者のみなさまでご確認頂きますよう、お願い申し上げます。
企業力を分析しよう!
利益の正体
まず以前も紹介しました『四季報オンライン』を用いた企業分析の方法を紹介いたします。
前回「企業利益の方程式」で説明しましたように、企業の利益は、商品やサービスを売って得た「売上」から、かかった「費用」を差し引いた残りが「利益」になります。
企業は、売上や利益などの業績をまとめた「決算報告書」を作成しなければなりません。
上場企業はその詳細な内容を「有価証券報告書」として公表することが義務づけられています。
未上場企業は簡便なものでも構いませんが、定期的に決算報告書の作成が必要になってきます。
決算報告書は、言わばその会社の『企業力』を数値化して目に見えるような形にまとめたものと言うことができるでしょう。
では『四季報オンライン』で、「トヨタ自動車」を検索した結果を見てみましょう!
利益にも色んな種類があるんですね・・・
違いがよく分かんないんですけど??
今後の企業分析で必要になるから、ちゃんと説明しておくね!!
企業業績を判断する上で特に重要なのは「売上」と「利益」です。
ただし、「利益」には様々な種類があります。
一番単純な売上総利益は、売上高から売上原価(仕入費用)を差し引いたものです。
ここから、人件費や広告宣伝費などを引いたものは営業利益と呼ばれます。
そして営業利益から支払利息や受取利息・配当金などを加算・減算したものが経常利益、経常利益から該当期間に臨時に発生した損益を加算・減算したものが税引前利益、税引前利益から税金などを差し引いたものが最終利益(純利益)になります。
なお「有価証券報告書」等の経常指標等欄には、売上、経常利益、純利益の数字が記載されています。
色んな利益の中で、最低限覚えておくべきものってありますか?
あと、もう一つは営業利益かしら!!
恋人と一緒で、利益が+になる会社を選ばないといけなんいんですよね??
はい、説明させて頂きます!
企業は、「利益」を上げ続けることが求められます。
なぜならば、企業は「利益」をあげることで初めて、「社会貢献」ができるからです。
企業は利益を安定してあげることで、雇用を生み出し、社員が生きていくために必要なお金(給与)を支払うことが可能になります。
また税金を納めることで、国や地方自体を発展させていくことに寄与することもできるでしょう。
もちろん、企業が提供する「商品」や「サービス」が人々の暮らしを豊かに側面がありますが、どんなによいモノやサービスを提供しても、企業がつぶれてしまっては意味がありません。
会社が倒産すると、多くの社員が失業し、生きていくことに困難をきたすことになります。
取引先や子会社、関連会社の社員たちにも迷惑をかけることになるでしょう。
つまり企業は、「存続」してこそ意味があるのです。
そして存続するためには、安定して長期に渡って「利益」を計上していくことが求められるのです。
企業にとって利益を上げることの重要性、ご理解頂けましたでしょうか
利益の内訳
何か例をあげたいだけど、どの会社にしよっか?
テレビに決まってるじゃないですか!!
『四季報オンライン』で「ソニー」って入れて検索かけてみて!
<6758>ソニー!!
先生、見方を教えて下さい!!!
では、解説させて頂きます。
まず【特色】を見て、ザックリと企業の特徴をつかみます。
ソニーの場合、「AV機器大手、海外でブランド力絶大。イメージセンターや、ゲーム、映画・音楽分野」と書かれていますよね♪
ここで【連結事業】を見てみます。
ここに企業がどういう事業で利益をあげているのかの内訳が書かれています。
難しい用語については、下記を参考にされて下さい。
HE&S・・・ホームエンタテインメント&サウンド(TVやオーディオ)
IP&S・・・イメージング・プロダクツ&ソリューション(コンパクトデジタルカメラ、ビデオカメラ、一眼カメラ、放送用・業務用機器など)
MC・・・モバイル・コミュニケーション(携帯電話やインターネット関連サービス。ソニーモバイルコミュニケーションズやソネットで展開)
ここまでよろしかったでしょうか?
次に【事業内訳】の数値を見ていきます。
事業名直後の数値は、売上高全体に占める比率(%)になります。
またカッコ内の数値は売上高に対する利益率(%)になります。
効率よく稼げている事業は、この利益率が高くなります
そして【海外】をみてみましょう。
これは海外での売上比率(%)を表しています。50%を超えていれば、その企業は「グローバル企業」であると言うことができます(ソニーは、70%と非常に値が高くなっていますよね)。
ビックリです!!
売上率は26%と一番値が高いですよね!!
売上率18%もあるんですね・・・、金融部門って、TVなどのHE&Sより値、高いんですね!!
金融は、生命保険、損害保険、銀行といったものの売上になるの!!
ソニーフィナンシャルホールディングスやソニー生命、ソニー損保、ソニー銀行で展開しているわ!!!
企業の4番バッターはどの部門?
ここまでくれば、残りはあと少しです!
企業の売上の柱(4番バッター)を探してみましょう!!
ここで、必ず覚えておいて頂きたいことがあります。
【連結事業】の各部門別の利益は、売上比率(カッコのない数値)と利益率(カッコのある数値)をかけ算すると、その相対的な大きさが分かる!、ということです。
例)G&NS(ゲーム&ネットワークサービス)部門の場合は、下記の計算式で事業の相対的な大きさを算出できます。
では、上記の計算方法に従い、ソニーの各事業部門の相対的な力を算出してみましょう。
この年に一番稼いでくれた4番バッターは、G&NS(ゲーム&ネットワークサービス)だったんですね!!
この企業分析、やってみて良かったです!!!
ていうか、やらないと分からないんですね、企業のホントの顔って・・・・
ちなみに、【比較会社】ってのがあるけど、気づいた???
「とりあえずビール」って感じでクリックしてみますね♪
うわっスゴ、各社のデータが出てきました!!
と、ここまでをまとめみたいと思います。
Aの『企業力』の分析で最低限みて頂きたいポイントは、以下の8つになります。
①企業の特色は? | 『四季報オンライン』(以下、同様)の【特色】の項目 |
②事業の内訳は? | 【連結事業】の各事業名(各部門名) |
③売上・利益の内訳は | 【連結事業】の各事業名の直後に示され売上高全体に占める比率とカッコ内に示された利益率 |
④売上・利益の柱は何?(2つは同じ、違う?) | ③の比率で最も値が高いもの 相対的な大きさは売上比率×利益率で算出する |
⑤国内、海外の売上比率は?(どっちが多い) | 【海外】の数値(比率) 50%以上であれば、グローバル企業 |
⑥競合はどこ、競合はもうけてるの? | 【比較会社】をクリックして確認 |
⑦売上・利益のトレンドは?(増えているのか、減っているのか) | 【業績】の直近3ヵ年を確認 |
⑧市場環境はいいの悪いの?今後はどうなるの? | 既出記事で解説した『業界地図』・HP『業界動向SEARCH.COM』の業界一覧/天気図を参照する |
とりあえず、全部マスターしたと思います!!
これだったら、私にもできそうです!!!
じゃあ、今度はIR情報の見方を伝授しよっか?
初めて聞く言葉だけど、ぜひお願いします!!
IR情報は企業研究の宝庫!?
まずIR情報とは、投資家関係(Investor Relations)の情報を指します。
企業の公式HPでは、メニュー部分もしくはページ下部に「IR情報」(投資家情報、個人投資家の皆様へ)という項目があるので、これをクリックされて下さい。
企業によりHPの構成、レイアウトは若干異なりますが、一番オーソドックスなものの見方を理解しておくと、他の企業のHPを見る際、応用がききますので、ここでは「トヨタ自動車」を例に説明させて頂きますね♪
トヨタ自動車のIR情報は、
・TOYOTAレポート(トヨタの場合、4-9月期の事業報告書を一般公開)
・有価証券報告書
・米国SE提出書類
・コーポレートガバナンス報告書
・Annual Report
・Sustainability Data BooK
の7カテゴリーで構成されています。
読者のみなさんにご確認頂きたいのが、「決算報告書」になります。
決算報告書の読み方
「決算要旨」を読もうとすると資料が膨大過ぎて心が折れそうになるのですが、大丈夫です、安心して下さい♪
どの企業も、個人投資家向けに分かりやすい説明会資料を作成しています(こちら)。
グラフや表をざっと見て、大意をつかんで下さい。
こちらをプリントアウトして、記事と照らし合わせながら読んで頂くと、理解が深まると思います!
ちなみに△は、マイナスって意味だから注意してね!
んん???
この表によると、連結販売台数は前期に比べ、ほんのちょっとだけ、減っていますね・・・
じゃあ、連結決算要約は前期に比べどうかしら?
営業利益率は変化ないみたいです!
所在地別営業利益はどうかしら??
頑張ってるんですね!!
これで決算報告書の見方はOKね!!
それから、決算を出す期間ってどうやって定めているんですか??
はい、とってもいい質問です!
以下、説明させて頂きますね!!
連結決算と単独決算
決算には、「連結」と「単独」という2種類の作成方法があります。
「連結決算」は、既出記事で紹介した親会社と子会社、純粋持株会社と事業子会社のような企業グループ全体を、まとめて1つの会社とみなして作成するものになります(この場合、親会社が決算を発表します)。
一方、「単独決算」は、親会社も子会社も、その会社だけの単位で作成するものです。
まとめるような会社がない場合は、単独決算しかないと思って下さい。
ただし既出記事で詳説したように、事業を行わない純粋持株会社の単独決算だけを見てしまうと、「売上はほとんどないし、従業員も極めて少ない」と誤解するおそれが考えられます。
それゆえ、読者のみなさんは、「IR情報に連結決算と単独決算の両方が掲載されている場合は、『連結決算』の方を必ず見るべし!」と覚えておかれて下さい。
決算期について
決算期とは、「決算を算出する期間」のことを指しています。
上場企業は、四半期(3ヶ月)ごとに決算を発表しています。
第1四半+第2四半期+第3四半期+第4四半期=通期
と考えて下さい(IR情報を見るとき、通期と四半期のデータを混同しないよう、注意して下さいね)。
では、通期と四半期、どちらのデータを見ればよいのでしょうか?
答えは「通期」になります。
なぜならば、売上動向に「季節性」がある会社が多いからです。
例えば、ビールを販売するメーカーであれば、夏に売上が伸び、冬に売上が低下してもおかしくないですよね(暖房器具を販売するメーカーであれば、その逆が考えられます)。
半期ごとの売上の増減に目がいってしまうと、大局的なトレンドを見落としてしまうことが考えられます。
通期の決算(年度単位の決算)のことを「本決算」とも呼んでいるのですが、読者のみなさんは、「業績は、四半期ではなく、通期の『本決算』を使うべし!」と覚えておいて下さい。
IR情報で他におさえるべきとこってありますか?
「Annual Report」かしらね!
Annual Report
アニュアル・レポート(年次報告書・統合報告書)とは、企業が情報公開の観点から、株主や金融機関などの関係先に年度末に配布する「経営内容についての総合的な情報を掲載した冊子」のことを指しています。
法律で定められた有価証券報告書とは異なり、社長のメッセージや企業理念、事業戦略、CSRへの取り組み、社員の動向など、さまざまな要素を自由に盛り込めるため、就活で重要となる経営者の考え方や企業のビジョン、社風などの「数字では見えない企業の特徴」を把握することができます。
トヨタの場合、トヨタの企業価値向上のための長期戦略、および社会の持続可能な発展への貢献について、詳しく述べられています。
ここの部分をしっかり読み込むことで、
- この企業を志望すべきかどうか?
- この企業にはどのような人材が求められているのか?
- エントリーシートや面接でどのようなアピールをすれば効果的なのか?
といったことが分かってくると思います。
また先ほどCSRという言葉が出てきましたので、簡単に説明させて頂きます。
CSRとは、「企業の社会的責任」のことを指しており、これを達成するために行われる具体的努力が「CSRへの取り組み」になってきます。
企業は自らの利潤を追求するのみならず、企業に勤める従業員、顧客、取引先、企業のある地域の人々などと深い関わりを持って運営をしていかなければなりません。
こういった「利害関係」のある相手への利益や安全を守りながら「社会的責任」を果たす必要があるのです。
具体的には、「法令の徹底順守」「人権の尊重」「環境問題への配慮」「企業価値の創造」「社会的ニーズの追求」「市場との結びつき」などが求められることになりますが、一連の企業活動や社会への働きかけを通して「企業が果たすべき責任」をCSRと呼んでいるのです。
CSRをしっかり行っている企業は、社会的に信頼(信用される)ことになります。
そしてそのことが、企業価値を高めることに直結してきます。
言わば、企業の人がらを見れるのが、CSRの項目なのではないでしょうか?
トヨタ自動車の場合、アニュアル・レポートにもCSRが述べられていますが、Sustainability Data Book(サステナビリティ・データブック)でその詳細が述べられています。
時間的余裕がある人は、ぜひ読んでみられて下さい!
あとはB『働きやすさ』・C『企業文化』・D『成長環境』の分析よね!!
企業のHPで、IR以外のところを見ればいいです?
例えば、採用情報とか??
実は、先月、Amazonで買ったんですけど、使いこなせてないんですよね・・・
働きやすさ・企業文化・成長環境を分析しよう!
『就職四季報』を用いることの積極的意味
前のセクションでは、企業のHP(IR情報)を用いた企業研究、企業分析のやり方を紹介しました。
こうしたIR情報や、企業HP内に設置された「採用特設サイト」、さらには就活ナビサイトでも、B『働きやすさ』、C『企業文化』、D『成長環境』をうかがい知ることは可能です。
ただし注意が必要です。
当ブログでも再三述べてきたことですが、企業のHPには「企業が就活生に見せたい情報(良い情報)」しか掲載されていません。
就活ナビサイトについても同様のことが指摘できます。
就活ナビサイトの運営主体である就活エージェントは、大学生がその企業に入社することで初めてクライエント企業からお金が支払われます。
エージェント側としては、何が何でも学生を企業に送り込まなければ、利益が発生しません。
結果として、就活ナビサイトの情報は、どうしても「企業寄りの情報(企業の良い情報)」の方へとバイアスがかかってしまいやすいのです。
読者のみなさんが、本当に必要とする情報は何なのでしょうか?
それは、中立的・客観的な情報なのではないでしょうか?
どんな企業にも、良い側面と悪い側面があります。
それらを冷静に評価し、吟味するためには、中立的で客観的な情報がどうしても必要となってきます。
そこで登場するのが『就職四季報』 総合版になります。
『就職四季報』は、企業とは利害関係のないニュートラルな立場で、就活生にとって本当に必要な情報を厳選して記述しているところにその特長があります。
『就職四季報』を存分に使いこなすことで、よそゆきではない、企業の本当の顔を知ることができるのではないでしょうか?
『就職四季報 総合版』の見方
まず『就職四季報 総合版』のレイアウトをご覧頂きたいと思います。
ぎっしり企業の情報が掲載されていますよね!
これらの情報は、7つの内容に分けられていますので、どの箇所にどのような情報が掲載されているのかをおさえていって頂きたいと思います!!
会社の事業とその特色を、会社四季報の担当記者が解説しています。
企業の採用サイトや就活ナビサイトとは異なり、ネガティブな内容にも積極的に言及しています。
まずはここを見ることで、その企業の業界での立ち位置が分かるのではないでしょうか?
ここには、選考情報が掲載されています。
具体的には、エントリー受付期間、採用プロセス、交通費支給、重視科目、エントリーシート(ES)のテーマ、筆記試験内容、選考ポイント、ES通過率、筆記試験通過率、倍率(応募~内定)が掲載されています。
事前に選考情報を熟知しておくことにより、選考を有利に進められることが期待できます。
志望企業が決まったら、必ずこの項目に蛍光マーカーを入れながら熟読してみて下さい。
通過率や倍率は、人気企業であるかどうか(競合する学生が多いかどうか)を表す指標となりますので、必ず確認するようにして下さい。
直近3年間の男女、文理、学歴、職種別の属性ごとの採用傾向や採用のされやすさを確認することができます。
女性読者の方は、男女別のデータを見て頂くことで、当該企業の「女性の採用のされやすさ」をおさえることが可能になります。
また、従業員に対して採用数が多すぎる場合は、あらかじめ一定数が辞めることを見越して採用していることが考えられます。
ブラック企業である可能性もあるので、十分に注意して下さい!!!
配属勤務地・人数、配属部署・人数が掲載されています(また巻末に、海外勤務の情報が記載されています)。
UターンやIターン、地元志向が強いなど、勤務地にこだわりがある人は必ずチェックされて下さい。
またあらかじめ志望職種が明確に定まっている方は、その部署への配属人数を押さえておいて下さい。
読んで字のごとく、給与・休暇・残業が掲載されています。
具体的には、有休取得平均、平均年収、残業時間・残業代、昇給、学歴・職種別初任給、初任給の内訳(巻末掲載)、ボーナス、25・30・35歳の平均賃金、35歳最高・最低賃金、週休、夏季休暇、年末年始休暇、育休期間・取得者数、有休付与日数が掲載されています。
この企業に入社した時の『働きやすさ』を知ることができるデータがぎゅっと凝縮されて掲載されています。
既出記事で紹介した「賃金カーブ」や、給与格差、休暇や残業の実態などを読み取ることができます。
読者のみなさんに強調しておきたいのは、
初任給だけを見てはいけない!
ということです。
重要なのは、初任給よりも30歳、35歳の賃金や平均年収になってきます。
初任給は競合他社より高いけれども、その後の昇給はわずかであるという企業もありますし、歩合制などで賃金格差(最高賃金と最低賃金の幅が大きい)企業もあります。
目先のお金(初任給)にとらわれず、5年後、10年後、どのように働き、どのように稼ぐことができるのかを見極めてほしいと思います。
ここでは、男女別従業員数、男女別平均年齢、男女別平均勤続年数、組合の有無、年間離職率・離職者数(定年退職は含まない)、男女別3年後新卒定着率、入社人数のデータが掲載されています。
この箇所を熟読することで、『企業文化』の一つの側面である人員構成(男女構成、年齢構成)をうかがい知ることができます。
なおサンプル画面上部赤枠内の「3年後離職率」において、25.0→0%との記載がございますが、25.0は前年度、0は今年度の3年後離職率を表しております。
企業理念、求める人材、本社住所、URL、社長、今後力を入れる事業、業績(3年分)、設立、資本金、事業構成、グループ会社が掲載されています。
この箇所も要注目なので、必ず傾向マーカーを入れるようにして下さい。
会社が求める具体的な人物像が分かるため、エントリーシート作成や面接対策に活用できると思います。
また『成長環境』に関わる内容が掲載されていることもありますので、しっかりチェックされて下さい。
会社データ(業績データ)は、先ほど分析した企業力をコンパクトにまとめたものになります。
四季報オンラインに掲載のない企業を志望される読者の方は、必ず売上高、営業利益、純利益の最新データと直近3年間のそれぞれの増減を確認するようにして下さい。
なお、女性読者の方は、『就職四季報 女子版』もぜひチェックされてみて下さい!
志望企業が「女性にとって働きやすい企業」であるかどうかを、様々なデータから把握することができると思います!!
志望企業が『総合版』に掲載されていない場合は?
今回紹介した『就職四季報 総合版』は、紙面の関係で、掲載が大手企業に限られております。
中小企業を志望される読者の方は、『就職四季報 中堅・中小企業版』を活用してほしいと思います。
『就職四季報 中堅・中小企業版』にも掲載されていない場合でも、諦める必要はありません。
なぜなら、『就職四季報』シリーズに掲載がなくても、本家本元の書籍『会社四季報』には掲載されている場合が往々にしてあるからです。
そうした場合は、まず『会社四季報』の方を調べられて下さい。
『会社四季報』にも掲載がないという場合は、金融庁の『EDINET』の書類検索機能を用いて、当該企業の「有価証券報告書」を検索して頂きたいと思います(↓)。
『EDINET』に志望企業名を入れクリックすると、当該企業の有価証券報告書のデータが表示されます。
左側の目次部分の第一部 企業情報→第1 企業の概況→5 従業員の状況を見てみて下さい。
企業の従業員数、平均年齢、平均勤続年数、平均年間給与が記載されておりますので、この箇所をチェックすることで、必要最低限の情報を入手できるかと思います。
足りない部分は?
自分で企業分析できる自信がつきました!!
ホント良かったわ!!
(B)働きやすさ・(C)企業文化・(D)成長環境について、『就職四季報』であまりよく分かんなかった項目もあるんですよね・・・
例えばどんなことが分からなかったかな?
私、早速実践してみます!!!
よかったです!
ますますやる気になってくれて!!
企業の本当の顔(内情や実情)は、外部からはあまりよく分からない側面があると思います。
それゆえ、今回ご紹介した『四季報オンライン』『IR情報』『就職四季報』に加え、色々な方法で企業にアプローチしていき、自分の方から積極的に情報を求めていってほしいと思います。
最後に今回のおさらいをかねて、課題を提示したいと思います!
あなたの志望企業の重要情報をリサーチして、まとめる課題になります!!
(2)あなたが気になる企業5社について、①業界業種、②特色、③本社の所在地、④直近3年の売上高、⑤直近3年の営業利益、⑥採用数、⑦従業員数、⑧会社の設立年、⑨平均年収、⑩新卒3年後離職率を調べて下さい。
(3)最後に調べて分かったことや、あなたの感想を書いて完成です!
今回の課題は、『四季報オンライン』『就職四季報』を見て頂くと、比較的スムーズに完成するのではないかと思います。
余裕がある人は、ピックアップした5社を比較して、分かったことをルーズリーフにまとめてみてもよいのではないでしょうか?
今回は5社に限定しましたが、このワークシートが10社、15社、20社と増えていくたびごとに、あなたの企業に対する知識はどんどん広がり、そして深まっていくと思います。
おそらくその過程の中で、あなたが活躍できる「理想の企業」を発見することが可能になると思います!
焦らず、コツコツ課題に取り組んで頂ければ幸いです!!
まとめ
『四季報オンライン』、IR情報、『就職四季報』を中心に企業をリサーチしていきましょう!
インターンシップ、OB・OG訪問、会社説明会を通じて、自分の不明点や疑問点を明らかにする努力を行っていきましょう!
次回は、就活生が最も気にされるトピックの一つである「ブラック企業」について解説させて頂きます。
最後までお読み頂き、本当に有難うございました。
>> 08.『ブラック企業』の見分け方
<< 06.企業を『4つの視点』で評価しよう!
- <引用・参考文献>
イノウ編著 (2019) 世界一わかりやすい業界と職種がわかる&選ぶ本‘21 ソシム株式会社
就活塾キャリアカデミー (2019) 就職活動1冊目の教科書 (株)KADOKAWA
東洋経済新報社 (2019) 就職四季報2021年度版(総合版)
東洋経済新報社 (2019) 就職四季報2021年度版(企業研究・インターンシップ版)
TOYOTA (2020) 決算説明会 第Ⅰ部(決算報告)資料
https://global.toyota/pages/global_toyota/ir/financial-results/2020_4q_presentation_jp.pdfTOYOTA (2020) Annual Report 2019
https://global.toyota/pages/global_toyota/ir/library/annual/2019_001_annual_jp.pdf